10/15ページ目 イクあむ 「………なぁ…。」 「……………。」 「………あ〜む〜……。」 「……………。」 「…………ぉい……。」 先ほどから部屋に響くのは、静かにカチコチと音を響かす時計の針の音と…、イクトの声だけ。 「…ぉい…あむ!」 「…え?…何?」 やっとのことでイクトの声に気づいた彼女、あむの視線はそれでも尚、彼に向けられない。 「……暇……。」 「…うん。そっか。我慢してね…。」 「…………。」 彼の“かまって”アピールもまるで無視。彼女の神経は今、あるものに集中していて、彼は長い時間ほったらかされているのだ。 「………ここを…こうして……あれ?…なんでほどけるんだろ…?」 あむが今、集中しているその手の中には、糸のついた針と、布らしきもの。机の上には裁縫道具が広げられている。 「……それ…さっきから…何作ってんだ?」 イクトはもはや半分拗ねてしまい、あむのベッドに寝転がり、ただぼんやりあむを見つめる。 「………これ?……今日ね…ガーディアンでみんなで腕章作ろうって話になって……。」 あむは、一生懸命、針を進めながら答える。 「………で?」 イクトが促すとあむは続けた。 「……うん。…で、それならお互いにそれぞれ…腕章手作りしてこようってなって…それで…」 あむの言葉が不自然にそこでピタリと止まる。不振に思ったイクトは上体を起こしてあむに視線を向け直す。 「…………それで、お前は唯世の担当になった…ってわけだ?」 「…ぃッ…!」 あむがギクリと反応してつい指に針を刺してしまう。 「……あは……ははは……」 笑ってごまかすあむにイクトの視線は鋭くなる一方。それでもあむの視線は腕章から外されることがない。 「……てことは、お前は今、唯世の腕章を“一生懸命”作ってるんだ?」 「…ぃ…いゃ……別に唯世くんのだからってわけじゃ……てか、なんで唯世くんのってわかったの…?」 あむは振り返らずに俯きながら、尋ねる。 「………さて?どうしてだろうな?………こっち向けよ。」 いつのまに立ち上がって歩いてきていたのか。彼はあむのすぐ後ろに立っていた。 「………ぃや…」 ふるふると頭を左右にふるあむ。こんな時にまで発動してしまう“意地っ張り”。悲しきかな、それが彼の感情を逆撫ですると解っていても、直すことができないあむだった。 「………へぇ?…他の男(唯世)のために彼氏を1時間もほったらかして?その上、彼氏のおねだりも聞いてくれないんだ?」 「ぅ゛……。あ…アンタのはおねだりじゃなくて命令…!」 意地を張って、わざと振り向かないで発していたあむの憎まれ口は途中からイクトに飲み込まれた。 「ふ……っ…ん…!」 「……………。」 一度唇が離れて、無理矢理振り向かされたあと、また唇を奪われる。 「…っ……ふぁ…っ」 「…………」 「…………っはぁ…」 やっとのことで唇が離れあむはくたりとイクトの肩に頭をもたれる。 「……急に…っなにすんのよ…っ」 真っ赤になってイクトを睨むあむ。しかしイクトの表情は嬉しそうだった。 「………やっとこっち見たな…。」 「…………ぇ?」 ポツリと呟かれたイクトの言葉にあむはきょとんとしてイクトに問いかける。 「………もしかして……寂しかったの…?」 「………うるせぇ……文句あるか。」 イクトは珍しく赤くなって口をとがらせる。まるで子供だなぁ…と考えながら、あむは嬉しくてにっこり微笑んでイクトに抱きついた。 「……ごめんね?」 微笑みながら、ちゅっとイクトの瞼にキスをする。 瞳だけでも、振り向いて (他じゃなくて、) (こっちを向いて。) (その瞳に俺を映して…。) (…笑って…。…それだけで) (…俺は幸せになれるから。) 「やっぱり瞳だけじゃ我慢できない。」 「え…?ひゃっ…!」 「瞳も、髪も、心も、気持ちも、身体も…全部、俺のものだ。」 「ちょっ…!?…離してっ…んっ!」 抱きあげられてベッドへと連れていかれたあむは、その後、ほったらかしの1時間分、しっかりとイクトの相手をするはめになったとか。 *おまけ* 翌日 実は、あむが唯世の分だけでなく、イクトにあげるの為のリストバンドを作っていたということが判明。それをもらったイクトがまた、あむを押し倒し、泣きそうなあむの悲鳴が響いた土曜日の朝。 「学校休みなんだからいいだろ?」 「腕章!腕章まだ途中!」 「明日すればいいじゃん。日曜日なんだから。」 「ぃ…ぃゃぁぁあぁぁあ!!」 後がきPlanetさんの企画に 投稿した作品です捧 再閧オてみましたニ いかがでしょう捧ォ イクトは計画犯っぽいですよね <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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